肺炎クラミジアは、急性呼吸器感染症を起こす第3のクラミジアとして1989年認定された微生物で、細胞内のみで増殖する一種の細菌です。鳥から移るオーム病クラミジアや性病、結膜炎を起こすトラコーマクラミジアとは別者です。誰でも一生一度は罹ると言われる位ポピュラーな菌で、成人での抗体保有率は約60%です。
肺炎をはじめ急性上気道炎(咽頭炎、鼻炎)、副鼻腔炎、気管支炎を起こします。また、肺気腫、慢性気管支炎などタバコ肺の急性増悪や喘息の悪化の原因となります。喘息については、喘息そのものの起因因子としても疑われています。さらに最近は動脈硬化との関連が注目されるなど歴史は浅いのに何かと話題の多い菌です。
急性呼吸器感染症に限ると、成人での頻度は、肺炎の約10%、気管支炎の5~12%、上気道炎の1~9%と言われています。どの年代でも罹り得ますが、
5歳以上の小児と60歳以上の高齢者に多く見られます。また、他の細菌、ウイルス、マイコプラズマなどとの混合感染が稀でないことも解ってきました。
症状は一般的にマイルドで、名前に「肺炎」と付いていますが気管支炎止まりが多いようです。
一番の特徴は長引く頑固な咳です。ひどいと一ヶ月以上続きます。痰はあまり出ません。上気道炎型では鼻汁の頻度も高く、これも長く続きます。熱はそれほど上がらず、肺炎でも38℃以上は半数以下です。
潜伏期間が3~4週間もあるので家族内で2~3ヶ月、学校などの集団内では数ヶ月かけてゆっくりはやることがあります。免疫反応の一つとしてこの菌に対する抗体はできますが、ほとんど感染防御に関係ないので何度でも罹ります。
診断法は、抗体価の測定、分離培養、菌の遺伝子増幅などいろいろあります。大学などの一部の研究機関は別として、一般的には普及している血清抗体価の測定方法を用います。最初の検査でもある程度の判断ができますが、正確には約2週間の間隔を開けた2度の採血で抗体価の上昇の割合を見なければなりません(まだまだ実用的とは言えませんね。)。
治療は、テトラサイクリン系やマクロライド系抗生剤、またはニューキノロン系抗菌薬を用います。日本で一番多く使われているセフェム系抗生剤は効果がありません。
「かぜ」がやたらと長引いていると感じたらこの病気も一度疑ってみても良いでしょう。