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コラムcolumn

2022.8.27

慢性閉塞性肺疾患 その1

慢性閉塞性肺疾患(“Chronic Obstructive Pulmonary Disease”という英語の頭文字を採ってCOPDとも呼ばれます)は、空気の通り道である気管支と空気が最後にたどりつく小さな風船状の肺胞に至るまで、肺の構造が変化して慢性的に空気の通りが悪くなる病気です(気流閉塞)。気流閉塞は薬剤などである程度は戻りますが、完全に元通りにはなりません。 原因の一番は何といってもタバコです。それも約20年後の喫煙の結果です。このようにゆっくり進行するのでそのほとんどの人がCOPDだとは気付かずにいます。最近日本で行われた40歳以上の成人を対象にしたCOPDの疫学調査では530万人という数字が出ましたが、実際はもっと多いと考えられています。死亡数、死亡率も増加し続けています。 では、COPDの肺ではどんな事が起きているのでしょうか。 タバコを吸うと気管支に白血球の仲間(好中球、マクロファージ、Tリンパ球など)が集まって、ある種の炎症が起きます。それが繰り返されると気管支の壁に線維化が生じて気管支は硬くなり、さらに変形したり狭くなったりします。炎症によって粘液分泌、すなわち痰が増えますが、それを排除する機能は衰えます。また、酸素と二酸化炭素のガス交換を行う最も細い気管支(呼吸細気管支と言います)や肺胞も破壊されて大きな風船状の肺気腫になります。正常な肺胞に取り囲まれた末梢の気管支は隣り合う肺胞の壁によって外側に引っ張られて開いていますが、肺気腫になるとその肺胞の壁の力が失われるので気管支が狭くなってしまいます。これらの障害は皆空気の流れの抵抗となりますので、空気の出入り、すなわち換気が悪化します。また、肺気腫では肺胞を取り囲む毛細血管が消えて行きますので、酸素を血液に取り込めなくなります。COPDでは以上のような換気の低下と肺血管の障害で酸素摂取量が低下します。そのため初期では動くと息苦しい、動悸がする、頭痛がするなど労作時に低酸素血症の症状が出ます。人によっては痰や咳も伴います。進行すれば大きな気道抵抗のため常に力を入れて呼吸しなくてはならず、横隔膜を含めた呼吸に関わる筋肉が疲弊してしまいます。安静時でも低酸素血症が起こるようになれば生命が危険になります。 ここで問題は喫煙者全員が上記のような障害をきたすのではないという点です。一部の人がなぜCOPDに至るのかはまだ良く解っていません。しかし、基本的には喫煙者はCOPDの危険が付いて回ると考えるべきでしょう。自分だけはタバコの害は受けないのだと解るのでしょうか? タバコの害はゆっくり、しかし後戻りしないで進んできます。 次回(その2)は、検査と治療についてお話します。