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コラムcolumn

2022.11.28

ノロウイルス(Norovirus)による胃腸炎

夏の細菌による感染性胃腸炎が下火になった後、冬には細菌に代わってウイルス性の胃腸炎が流行ります。 ウイルスとは、自身の設計図と少量の蛋白質が脂質の殻に入っているだけの単純な構造をした微生物です。細菌と違って養分やエネルギー源を外から取り込んで自分自身を複製することができず、細胞に寄生して初めて増えることができます。 話を元に戻して、冬場のウイルス性胃腸炎の約9割がノロウイルス(Norovirus)によるものです。毎年12月頃から3月頃まで続き、1月がピークです。以前は、ノーウォーク様ウイルスとか小型球形ウイルス(SRSV)などの呼称がありましたが、最近この名称に統一されました。 このウイルスは人の空腸という小腸の上の方にだけ感染し、小児から高齢者まで幅広い年齢層で感染します。100個以下のウイルス粒子でも感染し、酸や消毒用アルコール、熱にも強く、60℃位の加熱では死なない、なかなかの強者です。感染経路では、かつては生カキによるものが目立っていましたが、最近は牡蠣などの2枚貝とは関係ない不明のもののほうが多く見られます。感染者の手を介した住環境、食品のウイルス汚染や吐物の飛沫から感染する場合もあります。 カキなどの二枚貝は、大量の海水を出し入れしてその中のプランクトンを食べます。同様に海水中のノロウイルスもせっせと腸(中腸腺)にため込みます。それを生で食べたり、不十分な加熱で食べると当たってしまう訳です。ウイルスがカキの腸内で増えている訳ではないので、鮮度とは関係なく、採りたてのカキでもその中にウイルスがいれば感染します。国立感染症研究所などが2001年10月から2002年3月まで全国のスーパーなどで売られている生食用カキを調べた結果、10月、11月には検出率0%でしたが、12月に5%、1月には21%、2月は18%、3月は13%が汚染されていたとのことです。 では、海水中のノロウイルスはどこから来たのかと言えば、海に流れ込む下水であり、さらに遡って元を正せば患者さんから出た下痢便や吐物由来です。つまり人は、カキを介して糞口感染を繰り返している事になります。現在の下水処理ではウイルスは減りません。カキは栄養豊富な河口付近で養殖される事が多く、ウイルスを腸内に濃縮し易い状況にあります。 このウイルスによる胃腸炎の潜伏期間は24~48時間で、生カキで当たる場合は、ほとんどが食べた翌々日に発症しています。実は良く解っていないのですが、このウイルスが体に入っても症状が出ない人がいますので、全ての人が当たるのではないようです。 症状は、吐き気、嘔吐、水様下痢、腹痛が主で、熱は出ない場合から39℃以上の高熱までさまざまです。発症初日に一番症状が激しく、以後急速に回復し、多くは3日で落ち着きます。治療は、吐き気止めや整腸剤と水分補給などで、特別な治療は必要ありません。 予防対策としては、以下のようなものがあります。 1.カキなど二枚貝は生で食べず、充分加熱しましょう。中心温度85℃以上を1分以上加熱するとこのウイルスは不活化されると言われています。これはかなり熱い状態です。ご自身が覚悟の上で生カキを食べるのは 一向に構いませんが。カキフライは意外と中心温度が低い場合があります。湯通し程度ではだめ です。 2.トイレの後、調理の前、食事の前には、よく手を洗いましょう。時計、指輪などははずし、石鹸で泡立て手のひら、手の甲だけでなく、 爪と皮膚の間、指の間、指、しわ、手首も丁寧に洗います。 3.吐物や便を処理する際は、使い捨てのビニール手袋を使用し、できればマスクをしましょう。 4.吐物や便で汚れた衣服は、他の衣類と分けて洗いましょう。 5.吐物や便で汚れた床は、塩素系漂白剤を含ませた布で覆い、しばらく放置して消毒します。