内科・呼吸器内科・皮フ科・麻酔科(ペインクリニック内科)・リハビリテーション科松田クリニック

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コラムcolumn

2023.6.2

禁煙の助っ人(改訂版)

たばこは、色々な臓器の癌を起こし、狭心症、心筋梗塞という心臓疾患や肺気腫症、慢性気管支炎などの呼吸器疾患(いわゆる、たばこ肺)の元になります。その他皮膚や脳への影響など身体に悪い事例を挙げたら切がありません。 癌を例にとれば、喫煙者の肺癌死亡率は非喫煙者の4.5倍、喉頭癌では何と32.5倍、直接煙にさらされない臓器でも肝臓癌3.1倍、膵臓癌1.6倍です。また、本人は吸わなくても夫が1日20本以上吸ういわゆる受動喫煙をしている妻では、肺癌死亡率が、非喫煙者の夫を持つ妻のそれより1.91倍多いというデータがあります。 「たばこは吸う人本人の嗜好の問題だ。」とばかりは言っておられませんね。 物の道理からすれば、そんなに体に悪く人迷惑なものならわざわざお金を払って買い求めるなんぞバカらしいとなりますね。 しかし、いざ禁煙となるとこれがなかなか難しい。それは、心理的依存とニコチン依存という二つの依存症になっているからです。 特にニコチン依存症は一種の薬物依存症ですから抜け出すのは厄介です。 禁煙するとたばこが吸いたくてたまらない、イライラして落ち着かない、頭痛がする、眠い、だるいなどの禁断症状が出てきてつらいのです。ニコチンの血中レベルがどの程度で禁断症状が出るかは人によって違いますが、いずれにせよ不快な禁断症状を避けるため、そのレベル以上を維持しようとたばこを吸い続けることになります。むしろ、たばこによって吸わされ続けると言ったほうが良いかも知れませんが。 ところが、禁煙を助ける有力な手段があります。ニコチンを含んだ皮膚に貼るテープやガムを使う方法です。タバコによらずニコチンのみを体に吸収して、ニコチンの血中濃度をある程度保つので、禁断症状が出にくくなるのです。禁煙に慣れてきたら徐々に吸収量を減らし、ニコチンが無くても良い状態へもって行きます。これをニコチン置換療法またはニコチン代替療法と言います。この方法での禁煙成功率は、テープ、ガムいずれも約20~40%で、中には50%以上という研究結果があります。 注意する点は、ニコチン置換療法をしている時は、たばこを吸わないという事です。たばこを吸ってしまうと血中濃度が中毒域まで高くなり、吐き気、不整脈、興奮などの症状が出ることがあるからです。 テープとガムどちらでも構いませんが、テープの方が使い勝手が良く、ガムのように血中濃度が急速に上昇しないのでニコチン置換療法への依存が起きにくいなどの利点があるので初めはテープをお勧めします。問題は、少しお金が掛かる点です。テープですと医師の処方箋が必要で、保険が効かず8週間の禁煙コースで2~3万円します。ガムは既に一般の薬局でも「ニコレット」として買えます。人によって使う量が違いますが、月に2万円位です。でも、禁煙できればその後のタバコ代は浮きますし、何より”健康”を手に入れられるのですから試す価値はあると思いませんか。