本当です。残念ながら日本では、毎年約6000人の方が喘息で亡くなっています。実は、その多くが予防可能だと言われています。日本はかつて喘息死亡率の大変高い国でした。それが戦後順調に減少し、1980年頃からほぼ横ばいで(人口10万人に対して約5人)、1997年から再び減少傾向が見られます。しかし、まだまだ先進国の中では多い方です。年齢で見ると、60歳以上の高齢者が一番多く、これは喫煙による肺気腫や心臓の疾患など合併症があるからと思われます。
注意しなければならないのは思春期の死亡率が高い点です。学業のため受診の機会が少ない、人間関係や進学などのストレスが強い、治療の主導権が親から本人になり受診が不規則になる、安易にその場の苦しさを取る気管支拡張薬の吸入のみを頼り、場当たり的自己治療をするなど色々な原因が考えられます。喘息の重症度では、重症のみでなく、中等症や軽症でも死亡例が見られ、最近この中等、軽症例での増加傾向が目立ちます。致死的発作のタイプでは、発作がある程度時間をかけて悪化し、入院中に亡くなる例(重積発作)は少なくなり、
1時間以内に急速に気管支が狭窄する急速進行型(突然型)が多くなっています。そのため、大部分は自宅か病院への搬送中に死亡しています。
では、どういう患者さんが喘息死の危険があるのでしょうか。
1.患者さんが喘息をよく認識しておらず、甘く見ている。
2.重大な発作でも我慢したり、気管支拡張剤の吸入のみに頼ったりして、受診が遅れる。
3.過去に気管内挿管を伴うような大発作をしたことがある。
4.医師の患者さんへの教育不足。
5.医師の不適切な治療、特に抗炎症薬による予防的治療を行わない。
6.不定期な受診、夜間の受診。
7.仕事、勉強を優先。
8.吸入や服薬を守らない。
などがあります。患者さんは喘息に慣れっこになってしまい、甘く考えがちです。全ての発作は、悪くすれば死につながると認識しましょう。油断は禁物です。
気管支拡張薬である吸入β2刺激薬は、発作の軽いうちに早目に使って発作を止める大切な薬ですが、数回吸っても一向におさまらない場合は、最早それに頼るべき段階ではなく、医療機関でのさらにステップアップした治療が必要です。喘息では、原因が何であれ気管支に特殊な炎症が起きています。この炎症を抑える予防的治療をしないで、出てきた発作のみを抑える「もぐらたたき」的治療では良好なコントロール状態は得られず、喘息死も減りません。
吸入ステロイドを中心とした抗炎症療法がとても大切です。早くから吸入ステロイド療法を取り入れてきた欧米諸国では、近年、喘息死亡率の低下が報告されるようになりました。常日頃からの発作予防の治療が、ひいては喘息死も減らしていくのです。