2022.12.16
今日のインフルエンザ診療
つい最近までインフルエンザの診断は臨床症状に頼るしかなく、治療では安静や解熱剤の使用など対症療法のみでした。しかし、近年インフルエンザの診療は大きく様変わりしています。1つは診断面の進歩ともう1つは画期的な治療薬の出現です。
診断では、従来患者さんの咽頭拭い液からウイルスを分離培養する方法や急性期と回復期の血清で抗ウイルス抗体の上昇を見る方法がありましたが、判定に日数がかかり実用的ではありませんでした。
1999年、
迅速診断キットがわが国に導入されました。これは、患者さんの鼻腔吸引液、鼻腔や咽頭の拭い液に抗ウイルス抗体を反応させる方法で15分以内に外来で診断が付きます。当時はA型のみ判定できるものでしたが、以来急速に普及し、今では10種類近いキットが使えます。A型とB型の区別ができるものもあります。ウイルス検出感度は、大体咽頭拭い液で60%前後、鼻腔吸引液や鼻腔拭い液では80%以上です。これでも何も無かった時代に比べると大変頼りになります。
次に、治療面での進歩は抗インフルエンザ薬の導入です。1998年にアマンタジン(商品名シンメトレル)がわが国で最初に抗インフルエンザ薬として承認されました。これはA型インフルエンザウイルスの表面膜にあるM2蛋白質の働きを抑えて、ウイルスの遺伝子(RNA)が細胞の中に進入するのを阻害します。発症早期に飲めばシャープに効きます。しかし、B型インフルエンザウイルスには標的であるM2蛋白がないので効きません。
さらに画期的な薬剤
ノイラミニダーゼ阻害薬が登場しました。最初にザナミビル(商品名リレンザ)の吸入薬が2000年に、続いて経口薬のオセルタミビル(商品名タミフル)が2001年に導入されました。これら2剤は、インフルエンザウイルス表面のノイラミニダーゼという酵素を阻害し、細胞内で増殖したウイルスが細胞を離れて飛び出るのを抑えてしまいます。従って、ウイルスは次の細胞へ感染する事ができなくなります。A型、B型のどちらにも効き、発熱期間を短縮するだけでなく、合併症や抗生剤の併用を減らすなどの効果も報告されています。副作用も極めて少なく小児にも使えます。また、原理的には未知の新型ウイルスにも効くと予想されています。
但し、これら抗インフルエンザ薬はいずれもウイルスの増殖がピークに達する発症48時間以内に服用しないと効果的ではありません。
インフルエンザに罹ったかなと思ったら早めに医療機関を受診しましょう。