内科・呼吸器内科・皮フ科・麻酔科(ペインクリニック内科)・リハビリテーション科松田クリニック

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コラムcolumn

2022.6.30

夏型過敏性肺炎について

過敏性肺炎は、カビ、細菌、鳥類の蛋白質や、ポリウレタンの製造などに使うイソシアネートなどの無機塵埃を反復吸入することで生じる一種のアレルギー性肺炎です。原因となる物質によって50種以上の過敏性肺炎が知られていますが、特にわが国では、住居環境中にいるトリコスポロンというカビによって起こる夏型過敏性肺炎が最も多く見られます。 トリコスポロンは、高温多湿となる5月から10月にかけて風呂場、洗面所、台所などの水場にある古い木や風通しの悪い湿った部屋の畳、カーペット、押入れの寝具などに生えます。この疾患の約90%は古い木造家屋(平均築年数約20年)で発生しています。残り10%はマンションなど非木造家屋で発生しており、いずれも水はけ、風通しの悪い環境で起こります。環境要因に加えて、トリコスポロンにアレルギーを起こす遺伝的素因を持った人に発症するのですが、その素因の詳細は不明です。一家で複数の人が罹る家族発症もあります。症状は、頑固な咳(痰はあまり出ない)、呼吸困難と発熱です。呼吸困難は酸素の肺からの取り込みが悪くなるためで、ひどいとチアノーゼを伴う低酸素血症になります。家から離れると原因のカビ胞子を吸わなくなるので、泊りがけの旅行や入院で症状が軽快し、帰宅すると4~8時間で再び悪化します。 肺を聴診すると吸気にパリパリという捻髪音が聞かれ、これはレントゲン写真で異常が出る前から聴こえます。胸部レントゲン写真では、両側肺の中間から下の方にかけてびまん性に小さい粒状陰影やスリガラス様陰影が見られ、高分解能CTではわずかな病変も検出できます。呼吸機能検査では、肺活量が減り、ガスの拡散能が低下します。他に気管支鏡検査で肺の一部を採って病理学的検査や気管支・肺の洗浄液を採取して過敏性肺炎に合致する所見がないかも見ます。 診断は、上記症状や検査所見が揃えば確実ですが、血清または気管支・肺洗浄液中にトリコスポロンに対する抗体が見つかれば決定的です。 治療は、先ず入院して家から離れることです。軽症なら入院だけで自然に軽快します。呼吸困難や低酸素血症を伴っていれば副腎皮質ステロイドを使います。これでほとんどの患者さんは元通りに良くなります。次に何と言っても予防が大切です。徹底した大掃除と場所に応じた消毒、さらに日当たり、通気を良くするリフォームをします。多くはこれで住居からカビを除去できます。それでも夏季に再燃する場合には、建替えや転居も必要になります。