2023.5.6
家庭血圧測定のすすめ-その2
今回は、家庭血圧の測定方法や値の解釈など、いくつか注意点を挙げてみましょう。
1.現時点では、指や手首での血圧測定は、実際の血圧との誤差が大きく勧められません。
上腕にカフ(空気を出し入れするゴム管が付いた13~14cmの幅がある帯状の物)を巻きつけるタイプの自動血圧計を選びましょう。
左右どちらの腕で測定しても良いのですが、機種によっては左右のカフの巻き方が違うものがありますので説明書の通りに正しくカフを装着しましょう。
2.測定の時間は、できれば朝と夜寝る前の1日2回が良いでしょう。もちろん3回以上でも構いませんが、家庭血圧測定は長く続けてその経過を見て行くことが大切ですので、回数が多いと無理になりがちです。朝の測定時間は、起床後1時間以内の朝食前が良いでしょう。また、座位での安静1~2分後の測定が望ましいです。
3.測定日数は、治療初期や薬が変更になった場合は、できれば1週間に5日以上、血圧が安定していれば3日位でも良いでしょう。
朝、晩それぞれ何度測定してどの値をその時点の血圧とするか気になりますね。初回の測定値が高くても2回、3回と回数を重ねると低くなり、ほぼ一定に落ち着きます。安心したいがため低い値を出そうと何度も測る方がいますが、長続きしませんので1回で充分です。治療がうまく進めば、その1回目の高い値も徐々に下がります。もし4回目で気に入った血圧が出たとしてその値を血圧日誌に記載しても、その後の経過を見る場合は、いつも4回目の血圧でないと正確な比較はできません。それでは面倒ですね。
4.一般に高血圧の診断基準は、上の血圧(収縮期血圧)140mmHg以上、または下の血圧(拡張期血圧)90mmHg以上となっています。しかし、これはさまざまな研究から導き出された「外来で測定した血圧」についての基準であって、これをそのまま家庭血圧に当てはめることはできません。これは意外に知られていない診断や治療上の重要な問題です。
日本で行われた先駆的で詳しい外来血圧と家庭血圧の平均値を比較した研究で、
外来血圧140/90mmHgに相当する家庭血圧は125/80mmHgで、外来血圧160/100mmHgは家庭血圧135/85mmHgに相当するという結果が出ています。従って、もし家庭血圧の平均が135/85mmHgあれば、だいぶ高い血圧ということになります。未治療なら治療が必要ですし、既に治療中ならさらに強化する必要があるでしょう。
5.血圧は時々刻々変化するものです。いつも一定の値をとるほうが不自然です。思わぬ高い値が出たからと言って慌てないで下さい。高血圧の方はきちんと薬を服用していても、緊張、不安、怒り、興奮などの情動、または御自身でも良く解らない状況で一時的に190mmHg/110mmHg位になることがあります。この血圧が毎日続いているのなら問題ですが、一過性であればすぐ大事に至ることはめったにありません。そういう時はもう一度落ち着いて測ってみましょう。それでも高いなら、主治医に相談してみて下さい。激しい頭痛、めまい、嘔吐、胸痛など特別な症状がなければ心配ありません。たいていは、時間が経つと徐々に下がってきますし、新たな降圧剤を使うより気持ちを落ち着かせる「精神安定剤」で下がることもあります。たびたび発作性に血圧が上がるなら、褐色細胞腫など血圧を上げるホルモンを勝手に放出する腫瘍性の疾患を含めた2次性高血圧かもしれませんので、そういう場合も主治医とよく相談してみて下さい。