2024.3.22
高齢者の気管支喘息-その2
高齢者では、慢性の持続型喘息が多く、そういう方では、罹病期間の長期化に伴い気管支に構造的変化が生じて(リモデリングと言います)、常に気管支が狭くなっています。そこに発作が生じれば、容易に低酸素血症を起こしてしまいます。喘息は若い人の病気と思われているせいか、ご本人もご家族も長引く咳や喘鳴を喘息の症状とは考えず、「昔からこんなもんで大したことない。」と考えていらっしゃる方も結構おられます。こういう方に呼吸機能検査をすると結構悪いのですが、どうも普段からその悪い状態に慣れっこになっているらしいのです。
しかし、油断は禁物です。
治療面では、
高齢者でも抗炎症薬としての吸入ステロイドは有効ですし、第一選択薬に変わりはありません。何しろこの薬は、日本を含む世界各国で起きている喘息死亡率の減少に一番大きく貢献している薬剤なのです!現在は、吸い易い、いろいろな剤型の吸入ステロイド薬がありますので、ご自分に合った物を主治医とよく相談しながら見つけて、根気良く続けて欲しいと思います。吸入の手順を忘れてしまう方の場合は、ご家族の方が是非サポートしてあげて下さい。
どうしても吸入が嫌な方、吸入方法が習得できない方、吸入ステロイドを含むさまざまな治療でも軽快しない方には、止むを得ず内服のステロイドを処方することがあります。その場合は、骨粗鬆症、糖尿病、胃潰瘍、結核を始めとした感染症など副作用の心配をしなくてはなりません。そのため、一般に呼吸器内科医は必要最小限の投与量を探す努力をします。
たばこを吸っている方は、是非禁煙を真剣に考えてみて下さい。既に肺気腫症などのタバコ肺を合併しているかもしれませんし、たとえ合併していなくても、タバコはせっかくの吸入ステロイドの効果を弱めてしまいます。
普段から慢性の咳やヒュウ、ゼーがある方は、たとえ日常生活で苦しくなくても、一度は呼吸器内科専門医を受診して見て下さい。
また、喘息以外の疾患で既に他の医療機関を受診している方は、薬の内容も必ず報告して下さい。例えば高血圧症や、狭心症でβブロッカーという薬を服用している方は、喘息発作が出やすいので、呼吸器専門医から普段お掛りの主治医に連絡を取って、その薬を中止してもらったり、他の薬剤に変更してもらうこともあるからです。
風邪、インフルエンザなどのウイルス感染は、喘息悪化の最大の原因です。栄養や睡眠などについて普段から規則正しい生活を行い、外出から帰宅後はうがい、手洗いを励行して下さい。これは、一般の風邪の予防に有効です。インフルエンザに対しては、ワクチンが予防や重症化を防ぐ点で効果があります(100%ではないにしても)。流行する前に是非打ちましょう。風邪に罹って少し変だなと思ったら早めに主治医に相談して下さい。単なる風邪の治療ではなく、喘息そのものの治療を強化しないといけないことも多いからです。
以上、いろいろ怖いことや注意することを述べましたが、高齢者であっても喘息はきちんと治療を受けつつ自己管理されれば悲観する病気ではありません。恐れず、侮らずで前向きに行きましょう。