2024.2.10
メタボリックシンドロームのお話-その1
動脈硬化による狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患の予防対策に、従来高コレステロール血症や高血圧症など個々の危険因子への治療に重点が置かれていました。もちろん現在でもこれらの危険因子への対策は重要ですが、それのみでは、充分なレベルまで患者さんが減らないということが判ってきました。
近年、欧米諸国のみならず、東アジアでも高脂肪食と運動不足を背景に肥満症が急速に増加しています。その
肥満を基盤として、同じ人に、高脂血症、高血圧、糖尿病などいくつもの動脈硬化の危険因子が重なっている場合が多く見られ、虚血性心疾患もこのような人達から多数発生していることが明らかになってきました。世界的にこの複合型リスクファクター症候群の重要性が認識され、最近「メタボリックシンドローム」という概念で統一しようという動きが生まれました。我が国でも糖尿病学会や高血圧学会など8学界が協力して日本人の実態に合わせたメタボリックシンドロームの診断基準が作成され、2004年発表されました。即ち、
ウエスト周囲径の増大で表される内臓脂肪蓄積を必須項目として、それに高血圧、脂質代謝異常(高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症)、高血糖の3項目のうち2つ以上を伴うものです。
具体的数値は、
① お臍の高さで測ったウエスト周囲径が、
男性で85cm以上、女性90cm以上
(必須項目)
② 高血圧とは、
収縮期血圧(高いほうの血圧)が130mmHg以上、または拡張期 血圧(低いほうの血圧)が85mmHg以上
③ 脂質代謝異常とは、
血清中性脂肪150mg/dl以上、またはHDLコレステロール (善玉コレステロール)40mg/dl未満
④ 高血糖とは、
空腹時血糖110mg/dl以上
を言います。ここで注目すべきことは、②~④のそれぞれの危険因子の設定がいずれも低目の数値であることです。これは個々の危険因子がたとえ軽度であっても、肥満の人にこれらが重なるほど虚血性心疾患の頻度が急増する事実があるからです。
繰り返しますが、メタボリックシンドロームの基盤は内臓脂肪の過剰な蓄積です。体重計は一般に普及し、体重を気にされている方も多いと思いますが、腹囲(胴回りの長さ)を測る習慣はまだまだ無いようです。
これからはお臍の高さで是非腹囲を測ってみましょう。その値が①に該当する方は大いに注意が必要です。
次回(その2)は日本人でのメタボリックシンドロームの頻度、虚血性心疾患の危険度、対処法を述べます。