内科・呼吸器内科・皮フ科・麻酔科(ペインクリニック内科)・リハビリテーション科松田クリニック

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コラムcolumn

2024.8.15

血液透析患者さんの新しい痒みの治療薬

痒みは血液透析患者さんの約73%に見られる高頻度で重要な合併症です。痒みの強い患者さんは抑うつ傾向で睡眠障害となる場合が多く、しばしば問題となっていました。しかし、痒みは患者さんの生活の質を落としはしても、うっ血性心不全、感染症などと違って直接死に至る血液透析の合併症ではないため、これまで積極的には研究されていませんでした。実際の治療面でも薬物療法を含めあまり有効な方法が無く、治りづらいものと医師、患者さん双方ともあきらめていたのが現状です。多くの透析患者さんの痒みのメカニズムは多岐に渡り複雑で、従来の抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、保湿剤、外用ステロイド剤などの効果が不十分でした。ところが、最近、日本の製薬会社の研究により作られた血液透析患者さんの痒みを改善する世界初の経口薬レミッチ(一般名:ナルフラフィン塩酸塩)が処方可能となり注目を集めています。レミッチは、神経細胞の表面にあるオピオイドκ(カッパ)受容体を選択的に活性化します。痒み感覚を伝える神経細胞でこのオピオイドκ受容体が活性化されると痒みの伝達を抑えるので、痒みが収まると考えられています。透析患者さんの難治性の痒みの原因には中枢神経が関与していることが明らかになり、新薬であるレミッチはこのような中枢神経性の痒みに対して特異的に抑制する画期的な内服薬です。さらに皮膚局所の末梢神経性の痒みも抑制することが判明しています。現在、従来の痒み治療に抵抗性のある透析患者さんのみに投与可能 な内服薬ですが、今後は透析患者さんのみではなく、一般的な皮膚掻痒症の患者さんにも投与可能になることが期待されています。